予防接種の基礎知識

赤ちゃんが生まれて3ヵ月、そろそろ予防接種が始まる頃です。市町村からの通知や母子手帳にも記載されているように、赤ちゃんはたくさんの予防接種を受けるよう勧められています。けれど予防接種は、重い病気の免疫を作るためと言いながら、弱いウィルスを赤ちゃんの体の中に注射するのです。まだ生まれたばかりの、こんなに小さな体の中に。おまけに、接種の間隔がばらばらだし、集団接種の時に体調が悪かったりしたら?

 

こんな風に、特に第一子の赤ちゃんを育てているお母さんにとって、予防注射はとても緊張感をかき立てるものです。そもそも、予防接種は何のためにするのでしょうか?

 

第一に赤ちゃんを危険な病気から守るためです。予防接種をすることで、赤ちゃんの体の中に、その病気に対する免疫ができて、一生その病気にかからないで済むか、あるいはかかってしまっても、ごく軽く済むことがほとんどです。第二に、予防接種の対象となる病気は強い感染力を持つものが多く、一人が感染することによってどんどん広がってしまうことが考えられます。したがって、流行を防ぎ社会を感染症から守るという目的もあるのです。

 

私たちが成長する過程で、赤ちゃんが受ける予防接種の対象となる病気(結核、ポリオ、百日ぜき、破傷風、ジフテリアなど)は、あまり身近に存在するものではなかったでしょう。それらはかつて日本や世界で流行し、たくさんの犠牲者を出した病気です。かかってしまうと、治療のすべもなく死に至ってしまうことも珍しくはなかった病気です。現在、私たちの多くがその病気を心配しないで生活できるのも、かつて受けてきた予防接種のおかげです。仮に、受けていない人であっても、周囲の人が予防接種を受けていることによって、その病気をブロックしているのです。

 

赤ちゃんがお母さんからもらっている免疫の力は、日を追うごとに弱まっていきます。さまざまな病気の種類ごとに免疫がきれてくるおおよその期間が判明していて、その時期に照らして、各種予防接種の適正な時期が定められています。

 

まだまだ育児に慣れていなくて必死の時期ではありますが、大丈夫、どのお母さんも通ってきた道です。落ち着いて、予防接種のスケジュールを立ててみてください。それほど、難しいことではないはずです。

赤ちゃんが受ける予防接種は、主に定期接種と任意接種に分かれます。

 

定期接種とは、国が保健行政の中で一定の年齢で受けることを勧めているもので、感染力や赤ちゃんがかかったときの危険性が強いものです。三種混合(ジフテリア、破傷風、百日ぜき)、BCG、ポリオ、麻疹・風疹混合の4つが対象となり、法律で定められた年齢の期間内では公費負担で無料となることが多いのですが、一部自治体では有料のところもあります。ただし、接種は強制ではなく受けるか受けないかの最終的な判断は、赤ちゃんの親に任されています。

 

任意接種は、赤ちゃんの置かれた状況や家族構成などにより、主に親が予防接種を受けるか受けないかを判断するものです。おたふく風邪や、水疱瘡、などがあります。健康な赤ちゃんが通常感染しても軽症で済む事が多いのですが、重い合併症が引き起こされる可能性があり、感染するとリスクの高い体質を持っている赤ちゃんもいます。赤ちゃんの生活環境から判断して、親が病院で希望して受けます。費用は保健が利かないので自己負担となります。

 

特別措置としての予防接種に日本脳炎があります。以前は国が接種を勧めていたのですが、重い副反応が起こることが判明し、現在低リスクのワクチンを開発中です。日本脳炎そのものが日本からなくなったわけではなく、外国ではいまだに多くの感染者が出ている現状から、必要に応じて親とかかりつけの医師との相談の上、接種を行うことができます。

 

また、接種方法には集団接種と個別接種があります。集団接種は居住する自治体で日時と場所を指定されて受けるもので、個別接種はかかりつけの医院で個人的に申し込んで受けるものです。赤ちゃんの体調管理から考えると、個別接種はお母さんにとってもありがたいものですが、BCGやポリオは地域全体を感染から守るという考えの下、多くの地域で集団接種が行われています。自治体によって違うので、通知やお知らせがない場合は、問い合わせをして確認することが大切です。

 

WHOが世界的に赤ちゃんへ接種を勧めている予防接種は、BCG(結核)、ポリオ、三種混合(ジフテリア、破傷風、百日ぜき)、麻疹の6種類で、日本における定期摂取はこれらすべてをカバーしています。予防接種は、赤ちゃんの人生への大切な贈り物、大変だけれどお母さんもがんばってください。

さまざまな予防接種には、それぞれ受けることが望ましい年齢や受ける回数が示されています。それは、お母さんから赤ちゃんがもらっている免疫が弱くなり、赤ちゃんがそれぞれの病気に感染しやすい状態になる時期や、赤ちゃんに免疫がしっかりつく回数を考慮して考えられたものです。

 

また、予防接種の種類により次の接種を控える期間が違ってきます。これは、複数のワクチンが体内に入ることで起こるかもしれないリスクを回避することや、副反応が起こったときの原因を特定し迅速な対応を図れるようにする意図があります。さらに、集団接種の予防接種は日時と場所があらかじめ自治体から指定されます。赤ちゃんの体調をその日に合わせて整えておかなければいけません。

 

このように予防接種のスケジュールを立てるのは、初めてのお母さんには考えなくてはいけないことが多すぎて頭がこんがらがってしまうかもしれません。まずは落ち着いて大まかなスケジュールを組みましょう。優先するべきは集団接種です。受ける機会が限られるので、一度逃してしまうとずいぶん日にちがあいてしまってお母さんのあせりの原因にもなりかねません。自治体の集団接種スケジュールを把握して優先して受けるようにしましょう。一方、個別接種のものは赤ちゃんの体調に合わせてかかりつけのお医者さんで受けられるので、集団接種の合間を縫って受けることができます。

 

しかし、冬場など赤ちゃんの体調の管理が難しい季節に集団接種の時期が重なったりすると、どうしても当日、赤ちゃんが発熱したり元気がなかったり、予防接種を受けることが心配な状況になることも多々あります。そんなときは迷わず見送ってください。予防接種は赤ちゃんを重い病気から守るためにすることです。毒性を弱めているとはいえ、ウィルスを直接体に入れる予防注射は、元気なときにすることが原則です。体調が悪いときに予防接種をすることはかえって赤ちゃんに対する健康被害を招きかねません。

 

集団接種が受けられなければ予定を変更して個別接種できるものから進めていけばいいのです。日本の社会は、すでに多数の人が予防接種を受けて成長してきているので、何ヶ月かの遅れでリスクが大きくなることはあまり考えられませんし、決められているより間隔があいてしまっても回数をきちんと受ければほとんど心配はありません。

 

保育園の入園や海外渡航を控えている赤ちゃんのお母さんは、近い将来に赤ちゃんを取り巻く環境に合わせて予防接種を勧めていかなければなりません。その際、もっとも力になってくれるのは、かかりつけの小児科の先生でしょう。何でも相談して、アドバイスをもらいましょう。ウィルスや菌は目には見えません。予防接種の効果も目に見えませんが、確実に赤ちゃんを守るバリアとなってくれるのです。

予防接種を受けるにあたって、まず第一に考えることはそのときの赤ちゃんの体調です。体調と一言で言っても、赤ちゃんの体調を正しく判断することはそれほど簡単なことではありません。赤ちゃんの体温は、室温や着ている洋服の数、あるいは眠くなったりすると上昇することがよくあります。また、当然ですが赤ちゃんはよく泣くものですから、緊張しているお母さんには「もしかして体調が悪いのかも」なんて心配になったりします。体温は体調のバロメーターですから、赤ちゃんの平熱がどのくらいであるか正しく把握しておくことは、予防接種を受けるときのみならず、いろんな場面で役に立ちます。できれば、朝昼晩ごとに体温を測ってみると、赤ちゃんの平熱がつかみやすく、予防接種の前の体温が平熱であるのかそうでないのか判断がつきやすくなります。

 

居住している自治体の予防接種のシステムを理解しておかなければ、スムーズに予防接種を進めていくことはできません。出生届を提出すれば予防接種や検診のお知らせは郵送されてくる場合が多いと思われますが、転居や何らかの手違いで通知が遅れる場合も無きにしも非ずです。周りのお母さんからも情報を集めて、気にかかることは保健行政の窓口に問い合わせてみることが大切です。

 

また、予防接種を受けるか受けないかは、定期接種、任意接種にかかわらず、赤ちゃんの親が最終的に判断をします。受ける予防接種の意味や副反応をきちんと理解しておくことが大切です。その場で判断しようとしても、特に集団接種の場合には、会場はざわついているし、赤ちゃんはいつもと違う雰囲気に不安になって泣き出すことも多く、とても落ち着いて考えることなどできません。予診表の記入も含め、注意書きなどをきちんと読むことも、自宅で済ませておくことが大切です。持っていくものの用意も、時間に余裕を持ってしておくことは言うまでもありません。

 

何でも相談できるかかりつけのお医者さんは、育児の中でとても大切な存在です。予防接種に関しても、赤ちゃんをずっと見てくれているので適切なアドバイスを受けることができるでしょう。

 

予防接種を受けるとき、一番不安なのはほかならぬ赤ちゃん本人です。お母さんは落ち着いて、しっかりと抱っこしてあげてください。

予防接種の料金は、一般的な医療費と違って各医院や診療所によって違います。予防接種は保険診療ではないため、それぞれの医院や診療所で適正価格を決めているのです。医師会や話し合いで共通の料金を設定することは、独占禁止法によって禁止されているのでできません。料金設定にはワクチンの購入費、接種前の診療費、注射の手数料、注射器代などの消耗品代が含まれます。

 

医院によって料金に違いがあるのは、接種前の診察の捉え方がそれぞれ違うことが大きな要因であると考えられます。しかし、ほかの医院と比べて安く料金を設定しているからといって、いい加減な余診をすることは禁止されています。きちんとした診察の後、予防接種が可能であるかを判断することが医師には義務付けられているからです。年齢が小さいほどにリスクは大きくなることから、小児であるほどに診察は丁寧に行う必要があり、その診察費が予防接種の料金に反映されてきます。

 

予防接種はどこで受けても予防効果に変わりありません。かかりつけのお医者さんで受けるのがもっとも望ましいと考えられますが、あまり料金に違いがある場合、考慮するに値することでしょう。

 

とはいえ、定期接種とされている、ポリオ、BCG、三種混合、麻疹・風疹、加えて日本脳炎に関しては、法律で定められた年齢の期間内であれば無料で受けることができます。また、その期間を外れてしまい有料となってしまっても、自治体が補助を出しているところもありますから、まず、居住する自治体の予防接種情報をきちんと把握することです。有料で接種を受けると、とても無料で受けられたものとは思えないほどに高額な料金を支払うこととなりますから、気をつけましょう。

予防接種の副反応について、共通して認識しておきたいことは、接種後30分は接種した会場、あるいは医院で赤ちゃんの様子をみることです。急激に起こる副反応(アナフェラキーショック)は接種後比較的すぐに発生することが多く、予防接種を行った医師が直ちに対応できる環境にいることが大切です。帰宅後、接種を受けたところや受けた側のリンパ節が大きく腫れたり、高熱などの症状が現れたら、かかりつけのお医者さんを受診してください。

 

【それぞれの予防接種の副反応について】

 

■ ポリオ
接種後4日〜35日くらいで軽い風邪に似た症状や麻痺が起こることがありますが、100万人に1人くらいの確率です。

 

■ BCG
稀に、接種を受けたほうのリンパ節が腫れることがあります。

 

■ 三種混合
副反応はほとんど見られませんが、注射の跡が腫れたり、硬くなったりします。肩からひじまで大きく腫れることもあり、3、4日で腫れは引きますがひどいときは受診してください。

 

■ はしか
2割程度に摂取後7日〜10日で軽いはしかに似た症状が現れます、1日〜3日で治癒。わずかですが熱誠痙攣を起こしてしまうことがあり、さらに極めて稀に脳炎を起してしまうこともあります。

 

■ 風疹
軽い発熱や発疹、リンパ節の腫れが見られることもありますが、重い副反応はほとんど見られません。

 

■ おたふくかぜ
2〜3週間後に軽い耳下腺の腫れや発熱、咳や鼻づまりが起きることがあります。2〜4週間後に無菌性髄膜炎を起こすこともありますが、症状は軽く後遺症もほとんど見られません

 

■ 水疱瘡
1〜3週間後に発熱や発疹が軽く現れることがありますが、速やかに治ります。

 

■ インフルエンザ
接種した跡が赤く腫れる程度で、目立った副反応は見られません。卵アレルギーの人はアレルギーによる副反応があるので注意してください。

 

■ 日本脳炎
急性散在性脳脊髄炎という重い副反応が起きることがあり、現在、安全なワクチンを国が開発研究を進めています。

Q. 予防接種をしても病気にかかってしまうことがあるの?

 

A. 残念ながら予防接種では100パーセント感染を防ぐことはできません。けれども、感染しても予防接種を受けなかった場合と比べると、軽症で済みます。また、合併症に関しては発症することがほとんどありません。それぞれの予防接種によっても、感染の可能性は違ってきますが、病気そのものは完治してしまえば免疫もつきます。怖いのは重い合併症や後遺症が残ってしまうことです。その意味では予防接種を受けて、感染しても軽症で済むということは、十分なメリットと考えられます。

 

 

Q. なぜ無料のものと有料のものがあるの?

 

A. 予防接種によって防ぐ病気が赤ちゃんに及ぼす危険性や、社会に流行してしまったときの影響を考えて、危険性が高いと国が判断したものを定期接種として、定められた年齢の期間には無料で受けられるようになっています。有料である任意接種のものも、もちろん受けておくことが望ましいものでありますが、健康な赤ちゃんがかかってもさほど重症化はしないものです。しかし、生活環境や赤ちゃんの体質によっては、重要なものもありますから、気にかかるときはかかりつけのお医者さんに相談してください。

 

 

Q. 副反応の見分け方がわからない

 

A. 予防接種の副反応で危険なものは、接種後比較的すぐに起こるアナフェラキーショックがあります。この副反応は直ちに医師に対応してもらう必要がありますから、予防接種後30分は必ず会場や医院で赤ちゃんの様子を見てください。接種箇所やリンパ節がひどく腫れたときや、熱などの気になる症状が出たときは、かかりつけのお医者さんを受診してください。

 

 

Q. 鼻かぜや咳だけの症状でも、接種はさけるべき?

 

A. 予防接種を受けるか受けないかの判断は、赤ちゃんの親に任せられています。しかし、体調良好の場合はとにかく、鼻かぜや咳だけの症状のときは迷ってしまいます。そんなときは、赤ちゃんの今の状態を詳しくお医者さんに伝えたり、予診表に書き込んだりして医師の判断を仰いでください。

 

 

Q. 予防接種のスケジュールが狂いまくり!どうしたらいい?

 

A. 赤ちゃんはまだ生まれたばかり、体調の維持はとても難しいのです。スケジュールはあくまで予定です。体調がいいときに、また、赤ちゃんの生活環境から優先順位を考えて進めていけばいいのです。市役所の相談窓口やかかりつけのお医者さんに相談して、効率よく予防接種を進めていくアドバイスをもらうと、お母さんも安心することでしょう。

 

 

Q. アレルギーがある赤ちゃんは予防接種でアレルギーがでたりしないの?

 

A. インフルエンザワクチンは、ウィルスを孵化鶏卵を使って育てていますから、卵のアレルギーを持った赤ちゃんにはアレルギーが出てしまう危険性があります。アレルギーにもさまざまな種類がありますから、予防接種を受ける際にはきちんと注意書きを読んだり、医師に赤ちゃんの体質を説明したりして、受けなくてもいい苦痛を避けてあげてください。